ミニマリスト
- A K
- 2022年1月3日
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更新日:2 日前
ミニマリズムという生き方の哲学
最小にして、最大の豊かさ、“ミニマリズム”という考え方は、私の人生観に大きな影響を与えた。それは単に「モノを減らす」という習慣ではなく、思考の核を研ぎ澄ます哲学であり、すべての選択に通じる価値観だと感じている。
私はいわゆるミニマリスト気味の生活をしている。とはいえ、報道で見るような、テーブルも布団もない「仙人のような暮らし」ではない。私は“貧乏ミニマリスト”ではなく、“金持ちミニマリスト”を目指している。つまり、削ぎ落とす中にも自分にとっての「質」を追求する生き方だ。
自宅には少ないながらもお気に入りのデザイナーズ家具がある。車はレンタルで十分だが、バイクは必要。1万円の服を30着持つより、30万円の服を1着選ぶ。私服も2ラックほどに整理し、心から愛せるものだけを残した。

モノより、経験に価値を
訪れた人に「生活感がなさすぎて、よく暮らせるね」と言われることがある。私はモノを売る仕事をしているが、だからこそ気づいた。
“楽しく生きる”のに、モノはそんなに必要ない。
旅の中で学んだのは、「モノより経験に価値がある」という感覚だった。多くを所有するよりも、体験を通じて心を満たすほうがずっと豊かだ。消費のために働き、疲弊し、また消費で埋める――そんなサイクルに疑問を抱くようになった。
日本のコンビニの24時間営業を見ても、深夜3時に食べ物を必要とする人がどれだけいるのだろうかと考える。売れ残った弁当はミンチにされ、飼料となり、家畜となり、再び弁当に戻る。それは効率的な循環のようでいて、実は無駄の象徴にも思える。この国はいつの間にか、“便利”という名の過剰に慣れすぎたのかもしれない。
ミニマリズムとは、サスティナブルの本質を最も端的に体現する生き方である。

サスティナブルとは何か
ミニマリズムとは、サスティナブルの本質を最も端的に体現する生き方である。「少なく、深く生きる」という姿勢は、モノづくりにも、人との関係にも通じる普遍の哲学だ。
私は洋服業を営んでいるが、もはや“質の差”は業界人でも見分けがつかないほどになった。質だけで見たらメゾンブランドの服はめちゃくちゃコストパフォーマンスが悪いのだ。糸や生地の進化はこれ以上差がないレベルまでなってきている。昔は皇室用や貴族用で使われた糸や素材や技術がもうファストファッションでも使用される時代なのだ。だからこそ私は言う。「私たちは布を売っているのではない。価値観を売っているのだ」と。
高級ブランドの服は確かに高価だが、長く大切に着るという“意識”が伴えば、それはファストファッションよりずっとサスティナブルだ。いくらエコ素材を使っても、売れなければ廃棄される。作らない勇気こそが、最も環境に優しい選択だ。デザイナーとは“生み出す者”であると同時に、責任を背負う者でもあるのだ。
昨今は”サスティナブル”を意識して作っていると言うデザイナーがたくさんいますが、どんなエコ素材で作ろうが必要とされなければセールになり、ゴミになります。服を安易に作らない事こそ"サスティナブル"には一番いいんじゃないかと考える。
そんな単純な事を理解せずに売れないモノをサスティナブルな素材で生み出すなんてどうかしてるとさえ思う。それを続ければ生産される50%は廃棄されるとも言われているアパレル産業、もはや衰退は致し方ないですね。

人との関係も、サスティナブルに
“サスティナブル”という言葉は、モノづくりだけでなく、人間関係にも通じる。昨年、『GIVE & TAKE』を読んだことがきっかけで、“ギバー”と“テイカー”の関係性について深く考えた。
「他者に惜しみなく与える“ギバー”こそ、長期的に最も成功する。」
人には三つの型があるという――奪う者、等しく返す者、惜しみなく与える者。
テイカー(Taker): 自分の利益を最優先にし、他人から奪う人。 短期的には成功しやすいが、信頼を失いやすい。
マッチャー(Matcher): 「与えたら与え返す」「もらったら返す」という公平志向の人。 社会の大多数を占める中間タイプ。
ギバー(Giver): 見返りを求めず、他人に惜しみなく与える人。 人の成功を支援し、助けることを喜びとする。
興味深いことに、統計的に見ると――最も成功するのもギバー、最も失敗するのもギバー
つまり、「ギバー」は両極端に位置するらしい。
失敗するギバー:自分を犠牲にしてまで他人を助けてしまう・搾取され、燃え尽きてしまうタイプ
成功するギバー:自分と他者の両方を大切にできる・助け方・断り方・時間配分を工夫している・信頼を蓄積し、周囲の協力を得られる人
与える心で接しても、伝わらない人もいる。だが、それを嘆くより、自分のコミュニティを見直すきっかけとした。拡大より、持続。数より、質。組織でも関係でも長く健やかに続く形こそが理想なのだと思う。
「サスティナブルな関係性」とは、“テイカー”を避け、“ギバー”同士が支え合うコミュニティを築くこと。私はこれから、与える心を理解し合える者たちと、静かに共に歩む道を選びたい。もしすぐに理想の形を作れなくても、自分の規模で、できる範囲から始めればいい。飛び級しても、課題は先送りされるだけなのだから。

結局、ミニマリズム
“ヒト”“モノ”“コト”がいくら多くても、そこから価値を引き出せなければ、ただのノイズだ。本当に必要なのは「多さ」ではなく、深く味わえる少なさなのだと思う。
今の私は、選び抜いた関係・モノ・経験の中で生きていることに心地よさを感じている。ギバー気質だけで成り立つ経済圏を夢見つつ、少なくても深く、豊かに楽しむ生き方を目指したい。
結局のところ、「不必要なことを最小化することで、大切なことを最大化できる」――この言葉こそ、私の人生の核にある。
新しい年の始まりに、ただひとつ願う。今年もまた、ただ静かに、今という瞬間を味わい尽くしたい。




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